正しさを相手に押し付けない

「愛とは相手に変わることを要求せず、相手をありのままに受け入れることだ」

というイタリアの劇作家の言葉があります。

「友人とは、一緒にいて私をあるがままに受け入れてくれる人である」

というソローの言葉があります。

私たちは、近しい関係になればなるほど、時として相手に変わることを求めてしまいます。
それは本当に相手のためを思ってのことかもしれません。
僕にも経験があります。

しかし・・・。

「その人のためを思って」相手を変えようとした経験

押し付ける

以前、僕はある人に変わってほしいと心から願っていました。
「このままではその人は不幸になってしまうのが目に見えている。だから何とか変わってほしい。」
僕はこのままでは間違いなくその人は不幸になると危惧していました。
年齢的にも変わるならもう今しかチャンスはないかもしれないと思っていました。
その想いは僕の中で純粋なもので、ただその人により良く生きてほしいという願いから来ていました。
そして、その人は僕にとってとても大切な人の一人でしたが、その人が変わってくれるのであれば、その人との関係性が壊れても良いとまで思っていました。

そうしてその人との関係性が壊れる覚悟を持って、僕は「変わってほしい」と何度もうったえました。

いや、正確には、「今のままではダメだ!君は間違っている!君は変わるべきだ!」とダメ出しをしていたんです。
その正当な理由をアレコレ並べて・・・。
逃げられないように徹底的に・・・。

それが正しいと思っていたからです。
そして、それがその人のためだと思っていたからです。

でも、そんなことが何度かあって、結局その人は僕の前から姿を消してしまいました。

その人と連絡が取れなくなって悲しさはあったけれど、もうそれは既に半分覚悟していたことでもあり、「自分自身は彼のために全力を尽くした。結局彼は変わることを拒んだけど、いずれわかってくれる時が来るはずだ。だから無意味ではなかったはずだ。自分は正しいことをしたんだ。」と自分に言い聞かせていました。

でも、そうした想いの一方で、「ちょっとやり過ぎたかな。その人を傷つけたかもしれない。」という罪悪感のようなものや、「なんで相手を思いやる気持ちやより良く生きてほしいという願いがあるのにそれがうまく噛み合ないんだろう?」という疑問も湧いてきていました。

「一体あのときどうすれば良かったんだろう?どうすればもっと人と建設的なコミュニケーションがとれるんだろう?」
そんな問いが僕にコーチングを学ばせる一つの要因になりました。

コーチングを学んだ今、必要もないのに自分の想いだけで相手に一方的に自分の考えを押し付けるようなことはないでしょう。
もちろん、コーチングの時間でも本人にその気がないのに変わるように迫るようなことは一切ありません。

以前の僕は、「相手を尊重していなかった」「自分が正しくて相手が間違っていると思っていた」「自分のモノサシで見ていた」「準備ができていないのに自分の想いだけで変われと迫るなんてなんて相手のことを考えず乱暴だった」「相手の気持ちや価値観より常識的な価値観ばかりを判断基準にしていた」「あなたのためを思ってこれだけしているのになぜこの人はそれを受け入れないんだろう?恩知らずな奴だとまで心のどこかで思っていた」など、今思えば反省点だらけです。

「正しさ」や「あるべき姿」とは?

正しい夫婦関係、友人関係、人として、親として、社会人として、あるべき正しい姿に固執すると、とたんに息苦しくなります。
理想的な形が正しくて、それ以外は間違っているという二元論に当てはめると自分も周りも苦しめるばかりです。
また、理想はあるかもしれませんが、それは一般的に言われているもので、あなたやその人にとっては理想の形ではないかもしれません。
そもそも「正しさ」や「あるべき姿」を求めること自体間違っているのかもしれません。
本当はもっと他の中かのほうがずっと大事かもしれません。

また、「その人のため」という免罪符を勝手に自分自身に与えて人と接すると、何かのストッパーが外れて想いばかりが暴走してしまうことがあります。
そうなるとその相手の人は、その想いを受け止めきれなくなってしまうかもしれません。
合意していないコミュニケーションを勝手に始められるわけですから。
コミュニケーションがすれ違っています。

こうしてあの友人との出来事を今思い返せば、あの出来事は自分が成長するために必要な出来事だったんだと振り返ることができます。
(きっとその相手の方にとっても何か必要なことだったんだと思います。)

失敗して傷ついたからこそ、そこからたくさん学べたし成長することができました。

そして、冒頭の2つの言葉があらためて心に響きます。


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